[メイン] 船見結衣 : ひゅうう、と。
[メイン] 船見結衣 : 木枯らしが吹きすさぶ、寒気の透き通る冬。
[メイン]
船見結衣 :
体がどうしても冷えるこの季節。
それでも引きこもってばかりはいられないわけで。
[メイン] 船見結衣 : それを示すように、学校に見える人影がちらほら。
[メイン] 船見結衣 : 確かにそこには、熱があった。
[メイン] 船見結衣 :
[メイン] 先生 : 「それじゃ今日はここまで!みんな、おつかれさん」
[メイン] 船見結衣 : ぱんぱん、と先生が手を叩く音。
[メイン] 船見結衣 : これが部活の終わりを示す音になっている。
[メイン] 船見結衣 : 「ふぅ、はあ……はーい」
[メイン]
船見結衣 :
陸上部、その一員の船見結衣。
[メイン]
船見結衣 :
今日も部活動として校庭を走らされたわけだが。
これも中々、どうしてに大変だった。
[メイン] 船見結衣 : …ありていに言えば、キツい。
[メイン]
犬吠埼樹 :
そこへ、体操着を着た、背の小さな少女が
手にふかふかのタオルを持って、とてとてと結衣のもとへ駆け寄り。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「お、お疲れ様、でした……!えへへ……!新しいタオル、持ってきました……!」
[メイン]
船見結衣 :
……だけど、例えここで立ち止まるわけにはいかない。
挫けるわけにはいかない。
だって、大会が…私には。
[メイン] 犬吠埼樹 : 少しおどおどとした口調で、恥ずかしがりながらも結衣へ話かけ、そのタオルを手渡し。
[メイン] 船見結衣 : 「……あ、っ……樹」
[メイン] 船見結衣 : 見知った少女にふぅ、と安堵の溜息。
[メイン] 船見結衣 : 「……ん、わざわざ……別にいいのに」
[メイン]
船見結衣 :
と言いいながら。
…でも、汗で流石に体が冷えたな。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「いえ!これが、私の……私達の、部活動ですから!」
[メイン] 犬吠埼樹 : そう、彼女は────「勇者部」に所属している。
[メイン]
船見結衣 :
有難く、そのタオルを貰って。
熱が浮かした汗を、拭きとっていく。
[メイン] 犬吠埼樹 : 勇者?それは一体なんだ?と思うかもしれない。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……実際は、ただのボランティア部であり。
[メイン] 犬吠埼樹 : その活動の一環として、こうして陸上部のお手伝いをしている最中だ。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ……!結衣先輩!えっと……タイム、速くなってましたよ……!ほら!」
[メイン] 犬吠埼樹 : えへへ、と笑顔を見せながら、ストップウォッチを結衣へ見せる。
[メイン] 船見結衣 : 「………!」
[メイン] 船見結衣 : 「これは……ん、確かに……早くなってる」
[メイン] 船見結衣 : ……本当だ…やった、最近走り方意識したおかげかな…!!
[メイン] 船見結衣 : なんて思いながら、少し口元が上がる。
[メイン] 犬吠埼樹 : あ……結衣先輩、喜んでる……!
[メイン]
犬吠埼樹 :
えへへ……!こうして、こんな私でも……誰かの役に立ててるんだって思えて……。
それが、なんだか私も嬉しくて……嬉しくて……。
[メイン] 船見結衣 : 「……あっ、いつもありがとう、樹も付き合わせちゃってるし」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「あ、いえ!いいんです!いいんです!!」
手をぶんぶんと振って
[メイン]
船見結衣 :
……やば、にやけちゃってたかな。
…気を引き締めないと、これじゃまだ足りないんだし…
[メイン] 犬吠埼樹 : わたわたとしながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「えっと、その……わ、私も、こうして……結衣先輩のお手伝いができて……えへへへ……」
[メイン]
船見結衣 :
ふと、軽く。
手で顔を触りながらも、樹の話に耳を傾けて。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ、そうだ!結衣先輩!この後、ちょっと勇者部の部室に来ませんか……?」
[メイン]
船見結衣 :
「うん……いい後輩を持てたよ……なんてね」
なんて言いながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「結衣先輩、お疲れのようなので……水分補給と、えーとえーと……体力の付きそうな、おうどん!いっぱい食べさせちゃいます!」
[メイン]
船見結衣 :
「勇者部…?」
そういえば話には聞いたことがある、けれど実際に行ったことはない…。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……ふぇえっ!?い、いい後輩……ですか……!?」
[メイン] 犬吠埼樹 : 耳元が少し赤くなる。こうして直に褒められるのは慣れていないようで。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あうぅ、え、えっと、その……結衣先輩も!いい先輩!です!」
[メイン] 犬吠埼樹 : なんだかよく分からない返しをしてしまう。
[メイン]
船見結衣 :
「……んん……」
…本当に、困った時は助けてくれるんだから、樹のことは有難いけど。
[メイン] 船見結衣 : 「ん、なっ……おお、いい先輩、いい先輩……か、なるほど…なるほど」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……あ、結衣先輩、今ちょっと、ほっぺが赤くなった……!
[メイン] 犬吠埼樹 : ………か、可愛い……!
[メイン]
船見結衣 :
ちら、と少し目線がズレる。
……マジか、こういうの言われ慣れてないな……
[メイン]
犬吠埼樹 :
何故か、胸のあたりがキュンと掴まれてしまうような感情を覚え
結衣の目をじっと見てしまう。
[メイン]
船見結衣 :
「……こ、こほん…じゃあ、その誘い…有難く貰っておくね」
丁度運動もして、喉も乾いた頃だし。
[メイン]
船見結衣 :
「………? 何か…ついてる?」
こくり、と少し首をもたげ。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「! あ、はい!えへへ!精一杯おもてなししちゃいますね!」
嬉しそうに。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ふぇっ……!?い、いえ!?」
[メイン] 犬吠埼樹 : あたふたと手を振りながら。
[メイン]
船見結衣 :
いい先輩、か。
……ぶっちゃけ、どういう私を見られてるのかは分からないけど。
言われて悪い気は、しない。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「何も見てないですよ……!!えっとえーっと、そ、そのー」
必死に言い訳を考えながら……。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「………可愛いな、なんて……?」
ぽつりと、本心に残っていた感想を口に溢してしまう。
[メイン] 船見結衣 : 「────え」
[メイン] 船見結衣 : …顔の水面が、大きく揺らぐ。
[メイン] 犬吠埼樹 : あ………。
[メイン] 犬吠埼樹 : い、言っちゃった……!?あわわわわわ……!!
[メイン]
船見結衣 :
それは、動揺の波紋。
[メイン] 犬吠埼樹 : ゆ、結衣先輩は……陸上部のエースで……みんなからもカッコイイって言われてる人で……。
[メイン] 犬吠埼樹 : そんな人に可愛いって言ったら、失礼だよね……!?
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ごごごご、ごめんなさい!!今の聞かなかったことにしてくださいぃぃ~!!」
[メイン]
船見結衣 :
……可愛い、って言われたの…?
私が?……こんな、男勝りの私が?
[メイン] 船見結衣 : 「……あ、えあ……う、うん」
[メイン] 船見結衣 : それにつられるように、冷静さを取り戻そうとする。
[メイン] 船見結衣 : 「こ、こほん……まあ、頑張って褒めようとしてくれたのは伝わるよ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ、あうぅぅ……」
[メイン]
船見結衣 :
それでも何故か、どきんと。
心の奥底も、揺らいだ気がした、ような。
[メイン] 船見結衣 : ……可愛い、可愛い、か……
[メイン]
犬吠埼樹 :
変なことを言ってしまった自分に、ますます恥ずかしさと情けなさを抱き
縮こまってしまう。
[メイン]
船見結衣 :
「あはは……樹は…優しいもんね、伝わってくるよ」
タオルを首に掛けて、ようやくひと段落。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「! や、優しい、ですか……?……えへ、えへへへぇ……」
笑みを溢しながらも。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ!このままだとお風邪引いちゃいますね!」
[メイン] 犬吠埼樹 : そう、季節は冬。
[メイン] 犬吠埼樹 : 汗が渇けば体温は下がる。このままグラウンドに居残る理由もないだろう。
[メイン]
船見結衣 :
……うん、そうだ、そうだ。
私が可愛い、と言われるのも……気の迷いであったり、咄嗟の優しい嘘なんだろう。
[メイン] 船見結衣 : 「あ…それじゃあ、案内……してもらっても、いいかな」
[メイン] 船見結衣 : にこり、軽く微笑んで。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「はい!ではでは、シャワー室に案内しちゃいます!」
[メイン] 犬吠埼樹 : びしっ!と敬礼ポーズと取ってみせて。冗談口調でそう言いながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「まずは汗を流しちゃいましょう!」
[メイン] 犬吠埼樹 : そのまま、結衣の汗が滲んだ手を取る。自分の手に結衣の汗がつくことなんて何も考えずに。
[メイン] 船見結衣 : 「そうしよう……冷えてもこま……っ」
[メイン]
船見結衣 :
そうして、歩き出そうとしたその直後。
無意識のうち手に、熱がこもって。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……あ、結衣先輩の手……熱い。
[メイン]
船見結衣 :
……あ、っ……
…別に、女同士だろ…そこまで、気にすることでも、ない。
[メイン]
犬吠埼樹 :
冬だけど、体温で、温かい……
……ふふ、これは、結衣先輩がランニングを頑張った証、ですね……!
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………?」
[メイン] 犬吠埼樹 : そんな結衣の反応を見て、小首を傾げる。
[メイン] 船見結衣 : 「ん、んん……いや、思ったよりも寒いなって」
[メイン] 船見結衣 : そう言いながら、歩を進める。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あっ……!そうですね!急ぎましょう~!」
[メイン] 船見結衣 : ……どこか、奥底にある気持ちを誤魔化すように。
[メイン]
犬吠埼樹 :
うぅぅ、気遣いがなっていませんでした……。
勇者部として……もっともっと、頑張んないと……!
[メイン] 犬吠埼樹 : ………………。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……それにしても………。
[メイン] 犬吠埼樹 : 脳裏に浮かぶ、結衣の頬が赤くなる瞬間の映像。
[メイン] 犬吠埼樹 : …………。
[メイン] 犬吠埼樹 : 可愛かったなぁ。
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 : そんなこんなで結衣先輩におうどんを提供しようと思っていた私でしたが……。
[メイン] 犬吠埼樹 : あうぅぅ。部室、鍵がかかってました……!
[メイン] 犬吠埼樹 : しょぼーん……。他のみんなも、勇者部の活動してると思うから、邪魔しちゃいけないし……。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……そういえば、冬休み期間中でも、食堂はやってたような……?
[メイン]
犬吠埼樹 :
えっと、今の時刻は……11時!
[メイン] 犬吠埼樹 : うん、開いてる!
[メイン]
犬吠埼樹 :
じゃあじゃあ、シャワー室で汗流してる結衣先輩のところに行って……。
おうどん提供できなくてごめんなさいして……それでえっと、お昼ご飯!一緒に食べることにしましょう……!
[メイン] 船見結衣 : 「……ふぅ」
[メイン] 船見結衣 : さっぱり。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ!」
[メイン]
犬吠埼樹 :
お湯を浴びてしだれた結衣の姿を見て。
……少し、ドキッ、とした感情を抱きながらも。
[メイン]
船見結衣 :
疲れも冷えも、全部洗い流せた。
結構…気持ちよかったな。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「えっと、その……結衣先輩……」
申し訳なさそうな顔をしながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……部室、開いてませんでしたぁ……」
[メイン] 船見結衣 : 「……ん」
[メイン] 船見結衣 : 「ああ……そこまで気にしなくていいよ、仕方ないさ」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……うぅぅ……結衣先輩……優しいなぁ。
[メイン] 船見結衣 : 返すように、にこりと笑って。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……ぁ」
[メイン] 犬吠埼樹 : その笑顔に、またドキッ、としてしまいながらも。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……え、えっと!なので、えっと、えっと……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「勇者部自慢のおうどんを提供できなかったお詫びとして……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「こ、これから!食堂でお昼とか……どうでしょうか!……今日は、私が奢っちゃいます!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 後輩が、先輩に奢り宣言。
[メイン] 船見結衣 : シャワーで熱くなった体を、ゆっくりと冷ましていき。
[メイン] 船見結衣 : 「…んん……!?そんな、別におごりなんていいよ?」
[メイン] 船見結衣 : 「私もそこまで、気にしてるわけじゃないし…」
[メイン] 船見結衣 : ……そこまで気にかけてもらう理由もまたないわけだから。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「う、うぅぅ……そう、ですか……」
[メイン] 犬吠埼樹 : それでも、張り切ってしまった手前、モヤモヤが残る。
[メイン] 船見結衣 : 「あ………んん」
[メイン] 船見結衣 : 「まあ」
[メイン] 船見結衣 : 「…今日は……甘えさせてもらおうかな」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………!」
[メイン] 船見結衣 : ……樹のしょんぼりとした顔を見て、ふと。
[メイン] 船見結衣 : 良心が……いや。
[メイン]
船見結衣 :
……もっと胸に刺さる何かが、大きく動いた気がして。
…奢らせてもらう形となってしまった。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「えへへへ……!!」
結衣先輩に、甘えてもらった。
[メイン] 犬吠埼樹 : その事実で、心が不思議と弾む想いになり。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ではでは……!またご案内です!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣に手を伸ばす。
[メイン] 船見結衣 : 「……あ…」
[メイン] 船見結衣 : 「……ぅ、ん」
[メイン] 船見結衣 : その手を、自分でもなぜだかわからないくらいに、優しく握って。
[メイン] 犬吠埼樹 : 自分の手に伸ばされた際の、結衣先輩から
[メイン] 犬吠埼樹 : ふわりと香る、シャンプーの匂い。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……わぁ……。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……い、行きましょう!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 少し間を置きながらも、結衣の手を握り、食堂へと向かう────。
[メイン]
船見結衣 :
その香りを選んだのは、ふと目に着いたからで。
もっと爽やかなものもあっただろう、けども。
[メイン]
船見結衣 :
……桜の匂い、だなんて…なんだか。
……可愛らしいと思った。
[メイン] 船見結衣 : ただそれだけだった。
[メイン] 船見結衣 :
[メイン] 犬吠埼樹 : 『校内に残ってるやることない奴ら全員に告ぐ!今すぐ職員室に来い!30秒以内!』
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 : あ……。
[メイン] 犬吠埼樹 : まりぃ先生の放送……?
[メイン] 犬吠埼樹 : 道中、結衣と顔を見合わせ、首を傾げる。
[メイン]
犬吠埼樹 :
勇者部として、誰かの手助けをすることを第一としているため
これを無視するわけにはいかなくて。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……でも
[メイン] 犬吠埼樹 : 樹も、実はお腹ペコペコで……。
[メイン] 犬吠埼樹 : ぐうぅぅぅ。
[メイン] 船見結衣 : その顔を見て、ふと。
[メイン] 犬吠埼樹 : と腹の虫が鳴っちゃう。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ……うぅぅ……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 場に合わない腑抜けた音に、顔が赤くなってしまう。
[メイン] 船見結衣 : 「…あはは………先にご飯、済ましちゃう?」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「うぅぅぅ……はいぃ……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 私達は、もう既に暇になった身だけれども……。
[メイン] 犬吠埼樹 : えっと、あれ、です……!
[メイン] 船見結衣 : その腹鳴りに気づいて。
[メイン] 犬吠埼樹 : 腹が減っては戦はできない……ですよね……!
[メイン]
船見結衣 :
…まあ、ずっと見てもらってたわけで。
昼ご飯もまだだもんね。
[メイン]
船見結衣 :
「…私も運動してお腹すいちゃったからさ。
それに後で行っても怒られないよ」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「そう、ですよね……!じ、じゃあ、まずは、お腹を満たしちゃいましょう……!」
うん、うん、と頷く。
[メイン]
犬吠埼樹 :
きっと、今占っても、まずはお昼を食べるべし!ってお告げが出るはず……!
……多分。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……そんなこんなで、私達は食堂へ向かったのでした。
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 : 食堂。
[メイン] 犬吠埼樹 : いつもは、この時間帯は人でいっぱいで、どこの席も埋まっており。
[メイン] 犬吠埼樹 : 賑やかな場所だが……今は、冬休み。
[メイン] 犬吠埼樹 : 来校している生徒数も半分以下ということもあり、ガラガラの状態であった。
[メイン] 犬吠埼樹 : それでもなお、食堂が営業しているのは、やはりこの私立赤髪学園のすごいところなのだろう。
[メイン] 犬吠埼樹 : 帝京平成大学とは格が違った。
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………あ」
[メイン]
船見結衣 :
「結構空いてる、けど……人は0じゃないね」
何てことを言いながら、中へと入っていく。
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣に頷き、中を覗くと……見知った顔がちらほら。
[メイン] 犬吠埼樹 : でも………。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……話しかける勇気は、持っていなくて……。
[メイン] 犬吠埼樹 : 軽く目があった、顔見知り程度の友達と手を振るだけであった。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……………。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……はぁ……。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………もっと、前に出られたらなぁ……」
[メイン] 犬吠埼樹 : そう、ぽつりと溢してしまう。
[メイン]
船見結衣 :
…こちらの知り合いは、いなかったわけで。
誰かと挨拶するまでもなく、通り過ぎていく。
[メイン]
船見結衣 :
「……前に、か」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……ひゃいっ!?」
[メイン] 船見結衣 : 零した言葉が耳に入り。
[メイン] 犬吠埼樹 : とっさに結衣の方を向き。
[メイン] 犬吠埼樹 : あ、あぇ……!?
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………い、今の、聞こえて、ました……?」
[メイン] 船見結衣 : ふと、繰り返す。
[メイン] 船見結衣 : 「……あ、まあ……悩んでそうかな、ってことは」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「う………」
[メイン] 船見結衣 : はは、とバツが悪そうに笑う。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……あ、当てられてしまいました……。
[メイン] 船見結衣 : ……割と悩んでそうだったわけだし、私が口出すことでもない…
[メイン] 犬吠埼樹 : ……人の悩みを助ける勇者の一員なのに、私は……。
[メイン]
船見結衣 :
かもしれない。
が、気になる。その顔が。
[メイン] 犬吠埼樹 : 悩みを、持っちゃってて……。
[メイン]
犬吠埼樹 :
……消極的な自分を、どうにかして乗り越えたい
そう、ずっと思っていて……。
[メイン]
犬吠埼樹 :
お姉ちゃんにいつも、頼ってばかりだから。
だから、私も………前に、前に出て、みんなともっと仲良くなりたいのに……。
[メイン]
船見結衣 :
「いやまあ、なんだろうね」
自分も別に、前に出るタイプではない。
そう言う事をするならもっと適任の人がいるだろう。
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣の方を見て、紡がれる言葉に耳を傾ける。
[メイン]
船見結衣 :
前にたまたますれ違った、金髪ストレートの赤カチューシャの女の子。
友だちのことを揶揄って、バカやって……
そういう子の方が、きっと適任といえばそうだろう。
[メイン] 船見結衣 : 「…結構樹って、前に出る時は出てると思うよ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………え?」
[メイン] 犬吠埼樹 : きょとん、とした顔になり。
[メイン] 船見結衣 : 「ほら、樹ってさ……さっきもそうだし、人のことをよく見て、大事な所は前に出たり……」
[メイン] 船見結衣 : 「そういう、芯の強い所がある…と思うんだよね」
[メイン] 船見結衣 : ……私とは違う。表面だけの強さとはまた別。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……芯……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 胸のあたりで、拳をキュッと握ってみる。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………結衣先輩には、そう、見えるん、ですね……私のこと……」
[メイン]
犬吠埼樹 :
全く予想できていなかったこともあり……。
まさか自分が、褒められるだなんて……。
[メイン]
犬吠埼樹 :
……例え、お世辞だとしても……嬉しくて……。
自分の中でもそれが、自信に繋がっていくように感じられて。
[メイン]
船見結衣 :
……私は割と、脆い。
一人じゃいられないから、今もこうして樹と話している。
[メイン] 船見結衣 : 「…人から言われて、知らない所が見えるってよく言われるしさ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………えへへへ、ありがとうございます、結衣先輩……!」
[メイン] 犬吠埼樹 : ニコッ、と笑いながら。
[メイン] 船見結衣 : 「………ん、んん」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「……え、えっと、その……!」
結衣先輩の瞳の奥で揺らぐ、不安の感情を────
樹は、見逃さず。
[メイン]
船見結衣 :
その笑みに、なんだか照れ臭くなって。
頬を掻きながらも、樹に向かう。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「……その!私、結衣先輩のおかげで……こうして、勇者部の一員として頑張れているんだと、思います!!」
突拍子も無いことを、言ってみる。
[メイン] 犬吠埼樹 : でも、事実ではある。
[メイン] 船見結衣 : 「……私のお陰で…?」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「はい!」
強く頷き。
[メイン] 船見結衣 : …思いがけないことだ、私に言われた樹の感情もこんな感じだったのかな。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「えっと……上手く、言葉にできないんですけど……その、その……んぅぅぅ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……少し、私も思い上がりかもですけど……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「私のお手伝いが、こうして……結衣先輩の、陸上部での記録更新や……結衣先輩との、仲を深めているのに繋がっているのだとしたら……嬉しくて、嬉しくて……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「もっと、もっと頑張ろう!……って、思えて……」
[メイン]
船見結衣 :
…こくこくと、その話を聞きながら。
背中を壁に付けて。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「そんな想いにしてくれるのは……やっぱり、こんな私にも気にかけてくれて……こうして、一緒にお話をしてくれる……結衣先輩が、優しくて、素敵だから……なんだと、思い、ます……!」
[メイン]
犬吠埼樹 :
思っていることを、頑張って口に出す。
本心は、溜め込むよりも、こうして話した方がいいって、お姉ちゃんからも聞いたから……!あと、えっと……。
[メイン] 船見結衣 : 「あ…ん、んむ」
[メイン]
船見結衣 :
……そこまで直球に言われると思ってなかった。
…気恥ずかしい、というか。
そう、思われてたんだ…私の事。
[メイン] 犬吠埼樹 : ………もっと、結衣先輩と、近づいてみたいから……。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………えへへへ」
[メイン] 船見結衣 : ……そう思われてるのは、まあ、いい気持ち…ではあるから。
[メイン]
犬吠埼樹 :
結衣に、子どもみたいな無邪気な笑顔を見せる。
頬を若干赤くしながら。
[メイン] 船見結衣 : 目が逸れて、頬をまた搔いてしまう。
[メイン] 船見結衣 : その目に映った。
[メイン] 船見結衣 : 「……あ…」
[メイン] 船見結衣 : …可愛い。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……可愛い。
[メイン] 船見結衣 : その笑顔が、私の頭の中を吹き飛ばす。
[メイン] 犬吠埼樹 : 奇しくも、樹も同じ感情を抱く。
[メイン] 犬吠埼樹 : 自分の言葉で、恥ずかしく縮こまる結衣先輩を見て。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……えへへへ。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ、お昼ご飯ですね!ご飯ご飯!」
[メイン] 船見結衣 : 私も樹みたいに、もっと……可愛く、なってみたいな。
[メイン] 船見結衣 : ……なんて。
[メイン] 犬吠埼樹 : つい、結衣先輩との話に夢中になってしまった。
[メイン] 船見結衣 : 「……っ、あ…そうだね、閉じちゃうな…」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「えへへ!じゃあ、今日はいっぱい食べちゃいましょう!私がお財布です!」
[メイン] 犬吠埼樹 : ぽん、と胸の辺りを叩いて見せる。
[メイン]
船見結衣 :
「あはは……頼もしいよ」
…ほどほどのうどんとかにしておこう。
[メイン] 犬吠埼樹 :
[メイン] 犬吠埼樹 : そんなわけで、それぞれ注文。
[メイン] 犬吠埼樹 : 私は!うどん命ですので……!
[メイン] 犬吠埼樹 : 今日は奮発して!お月見うどんにしちゃいます!
[メイン] 船見結衣 : 食堂だってまだまだ寒い。
[メイン]
船見結衣 :
温かいもの、きつねうどんを注文。
[メイン] 船見結衣 : ……素でもよかったんだけどな、なんて思いながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣先輩の注文したそれを見て。
[メイン] 船見結衣 : 「……ん?」
[メイン] 犬吠埼樹 : うどん好きとして、笑顔が零れちゃう。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……んへへへ~、何でもないですよ~」
[メイン] 犬吠埼樹 : ニコニコと。
[メイン] 船見結衣 : 「……いつにもまして上機嫌だなあ」
[メイン] 船見結衣 : なんて言うが、その笑みもまた私の頭を駆け巡っていった。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ん、んぅ~……それは、ですね~」
[メイン] 犬吠埼樹 : パキッ、と割り箸を2つに折り外し。
[メイン] 船見結衣 : ぽす、と席に座り。
[メイン] 犬吠埼樹 : 香るカツオ出汁の匂いに多幸感と、空腹を満たす高揚感を覚えながら……。
[メイン]
船見結衣 :
ぱきんと箸を二つ割り。
いただきます、と手を合わせる。
[メイン] 船見結衣 : 「…うんうん」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「……結衣先輩とお揃い、だからです!」
えへへ、と笑い。うどんを見る。
[メイン] 船見結衣 : 運動をして空いた腹には、香るダシの匂いは耐えられない。
[メイン] 船見結衣 : 「……ん、あ、あ~~~………」
[メイン] 犬吠埼樹 : すっかりテンションが上がっていた樹は、ちょっと大胆なことを口走っちゃう。
[メイン]
船見結衣 :
……まあ確かに、そういえばうどんでお揃いだけど…!
…それを嬉々として言ってくれるのは、なんというか……
[メイン] 船見結衣 : 「……そ、そうだ、ね……」
[メイン] 船見結衣 : 恥ずかしい…!
[メイン] 犬吠埼樹 : ………。
[メイン] 船見結衣 : 慌てて、うどんの容器に目を下ろす。
[メイン] 犬吠埼樹 : ちょっと、一瞬だけ、不安になる。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………嫌、ですか、ね……?」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……人との距離の縮め方が、分からない……。
[メイン]
船見結衣 :
…ああ、ダメだ……
なんか、樹にそう言われると、その……普段の自分を振舞えなくなる…
[メイン] 船見結衣 : 「……え」
[メイン] 船見結衣 : 思わず、樹の方を向き直り。
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣先輩が、こうして視線を外しちゃうのは、いつもはカッコイイ結衣先輩の、可愛い照れ隠しなのかも、だなんて思っていたけれども。
[メイン] 琴葉 茜 : …がらりとした食堂を見回しつつ、入ってくる
[メイン] 南条光 : 「えっと……ここだね、アヤさーん。茜さーん」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……本当は、あんまり、私のこと……疎ましいとか……思ってたり、とか……。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 足音を立てず、すたすたと続く
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………あ」
[メイン] 船見結衣 : 「それは………」
[メイン] 琴葉 茜 : 特に先客を気にした様子はなく
[メイン]
アヤ・キリガクレ :
「……み、見つかってしまいました」
項垂れる
[メイン] 犬吠埼樹 : そんなことを考えていると、見知った3人の顔が視界に入り。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「や、やはりまだ勢いが……!?」
[メイン]
琴葉 茜 :
「…何食べましょうか」
食券を吟味してると
[メイン]
南条光 :
あまり行ったことはないものの
場所をしっかりと覚えてはいるため二人を先導する。
[メイン] 船見結衣 : 言い切る前に、樹の視線が別の方に向く。
[メイン]
南条光 :
「えっと……」
何があるんだろう……
[メイン] 犬吠埼樹 : 少し、曇りの掛かった表情で、ぺこりと、3人へ御辞儀。
[メイン] 船見結衣 : なにが…と、そちらの方を向く。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……気、を取り直さないと」
[メイン]
船見結衣 :
「……あ、3人とも」
軽く手を上げ、見知った人らに挨拶。
[メイン]
琴葉 茜 :
「ども」
軽く礼を返し
[メイン]
アヤ・キリガクレ :
「みなさま、何になさいますか?」
「あら、船見様!」
[メイン] 琴葉 茜 : そのまま、素うどんを一つ
[メイン] 南条光 : 「あっ結衣!久しぶり!」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「こ、こんにちは~……」
声のボリュームが、先程よりも少し小さく。
[メイン] アヤ・キリガクレ : おにぎりセットを頼むと、そのまま話を続ける
[メイン] 船見結衣 : 「ん、お久しぶり」
[メイン] 琴葉 茜 : 「冬休みから、お元気ですな」
[メイン] 南条光 : 「樹も久しぶり!」
[メイン] 船見結衣 : …樹に言いそびれちゃったな…
[メイン] 犬吠埼樹 : おどおどとした態度、引っ込み思案な性格がまた露呈してしまう。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「犬吠埼様もお元気そうで…!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「は、はい……!南条先輩も、お久しぶりです……!」
[メイン]
犬吠埼樹 :
横目で、結衣先輩の表情を確認しながら。
……あぅ……変なこと言っちゃったばかりに……視線を、合わせにくいです……。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「あ……アヤ先輩も、え、えへへ」
困り眉で、少し手を振り。
[メイン]
琴葉 茜 :
「…ま、さっさといただきましょ」
そのままうどんを受け取り
[メイン]
蕪羅亭 魔梨威 :
「ん?お前らまだ溜まってたのか?」
ぶらぶらと食堂に歩いてくる
[メイン]
船見結衣 :
「みんなも昼食……みたいだね」
……樹…落ち込みやすい性格してるし、気にしてないといいけど。
[メイン]
南条光 :
「……♪」
友達、それも結構な人数で一緒に食事ができるのが、少し嬉しい。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ……まりぃ先生」
[メイン] 南条光 : 「あっ先生」
[メイン] アヤ・キリガクレ : がっつかずにのんびりと食事を続ける
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「先生!」
[メイン] 南条光 : さりげなく注文していた牛丼を受けとる。
[メイン]
船見結衣 :
「あ、先生……こんにちは」
[メイン] 犬吠埼樹 : 先程のモヤモヤは、一旦保留。
[メイン] 琴葉 茜 : 「ちょい用が出来ましたね」
[メイン] 蕪羅亭 魔梨威 : 「ていうか島村はどうした?仲間外れはよくねえぞ」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……みんなに、変なところ見せたくないし……!
[メイン] 琴葉 茜 : …しもうた、センセまで
[メイン] 船見結衣 : つるつる、とうどんを啜りながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 普通の態度……普通の態度……!
[メイン] 犬吠埼樹 : 「へ……?島村先輩も、来てたのですか……?」
[メイン] アヤ・キリガクレ : まあ、まあ、まあ!
[メイン] 南条光 : 「そういえば抱月さんどうしたのアヤさん」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「………あら?」
[メイン]
犬吠埼樹 :
確か……部活動には所属してなかったはずなので……。
あー……補習、でしたっけ……。
[メイン] 南条光 : 茜さん、ちょっと慌ててる……?
[メイン] 船見結衣 : 「……あれ、結構人ここに来てたんだなあ……」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……どうやら、帰ってしまわれたようですね」
[メイン]
船見結衣 :
折角だし挨拶しておけばよかったな……
あんまり会う機会、ないんだし。
[メイン]
南条光 :
「ええ……?」
いやあたしが言えるほどでもないけど……
[メイン]
犬吠埼樹 :
「………?」
琴葉先輩の様子に、少し首を傾げながらも。
[メイン] 琴葉 茜 : 「ま、用がなければそんなもんやろ」
[メイン] 蕪羅亭 魔梨威 : 「……の割には下駄箱に靴が残ってたがな」
[メイン] 琴葉 茜 : 「ウチもさっさと帰る予定やった…」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「あら…?」
[メイン] 琴葉 茜 : …ふうん
[メイン] 南条光 : 「んー……」
[メイン] 琴葉 茜 : なんや、今日は思うたより面倒やな
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「戻ってきていらしたの……ですか」
[メイン]
船見結衣 :
「…用事が終わったなら帰ればいいんじゃ…?」
つるつる。
[メイン] 琴葉 茜 : つるる、と麺を啜り
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ……ぅ」
[メイン]
アヤ・キリガクレ :
「では、いったいどちらへ…?」
漬物を齧り、首をかしげる
[メイン]
犬吠埼樹 :
用事が終われば、帰ればいい。
その言葉に、何だかモヤっとしてしまう樹。
[メイン] 蕪羅亭 魔梨威 : 「少し見回ってあと行ってないのは…廃校舎ぐらいか」
[メイン]
南条光 :
抱月さんの事も、ちょっと心配だな。
……何か抱えてそうって感じじゃなかったけど一応。
[メイン] 犬吠埼樹 : まだ、帰りたくないなぁ……なんて、思って。
[メイン] 南条光 : 「じゃあ……そうだね」
[メイン] 琴葉 茜 : 「…ま」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ぇ……?」
[メイン] 犬吠埼樹 : は、廃校舎……?
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「みんなで探しに行きましょうか?」
[メイン] 南条光 : 「先生も最低二人一組って言ってたし……」
[メイン] 犬吠埼樹 : びく、と手が一瞬だけ震え。
[メイン] 船見結衣 : 茜にはそういったものの、じゃあ自分はどうなんだと言われると。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……無論、恐ろしいという方は避けていただいて」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「ほへ……?ふ、二人一組……?なる、ほど……?」
まりぃ先生らしい、といえば、らしい、ですかね……?
[メイン] 南条光 : 皆で、っていうのはあたしもそうしたい所なんだけど………
[メイン] 琴葉 茜 : 「…廃校舎、なあ」
[メイン] 蕪羅亭 魔梨威 : 「そうそう、それぐらい仲間甲斐がないと友達とは言えねえぜ」
[メイン]
船見結衣 :
…今すぐに帰りたい、とは思えなくて。
……ここまで誰かと話せたのは、久しぶりだったからだろうか。
[メイン] 南条光 : 「……茜さんはどう?」
[メイン] 犬吠埼樹 : ………。
[メイン] 琴葉 茜 : しもうた、それはそれで分かれづらいしい
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣先輩の顔を、ちらりと見る。
[メイン] 琴葉 茜 : 「…んあ?ウチ?」
[メイン] 犬吠埼樹 : まだ、一緒にいてほしい、だから……。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「後、南条様は?」
[メイン]
南条光 :
「……」
んー……やっぱり
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ、あの、結衣先輩……その、部活終わりで、疲れてるかも、ですけど……」
[メイン] 船見結衣 : …どうせ家に帰っても、がらんとしたワンルームが待ってくれるだけだ。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………その、冬休みの学園って、すごく新鮮、ですよね……?」
[メイン]
蕪羅亭 魔梨威 :
「てなわけで、島村のことはお前さんたちに任せた。先生にはたくさん仕事があるからな、じゃあな」
手をあげて食堂を去っていく
[メイン] 犬吠埼樹 : 「な、なので……一緒に、どう……です、か……?」
[メイン]
船見結衣 :
「……ん、うん」
食べる手を止めて。
[メイン] 犬吠埼樹 : ………また、さっきみたいに、避けられてしまうかもしれない。
[メイン]
船見結衣 :
「……それは、うん…」
かちん、と箸を器に置いて。
[メイン] 琴葉 茜 : ちょい髪を梳いて
[メイン] 犬吠埼樹 : でも、でも……!私は……もっと、結衣先輩と、仲良くなりたいから……。
[メイン] 船見結衣 : 「……私も巡ってみたいかも」
[メイン] 船見結衣 : 一緒に。
[メイン] 南条光 : さりげなく牛丼を食べ終えている。
[メイン] 犬吠埼樹 : 箸を持った手に、少し力が入る。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣先輩の返事に、パァ、と顔が明るくなり。
[メイン] 南条光 : 「えっと、アヤさん」
[メイン] 船見結衣 : 言葉が、寸前で止まった。
[メイン]
犬吠埼樹 :
もしかしたら、嫌々付き合っているかもしれないけれども……。
それでも、それでも……。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「はい!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……ありがとうございます、結衣先輩……!」
[メイン] 琴葉 茜 : 「ああ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 樹はというと、実は。
[メイン] 船見結衣 : ……ただ、その気持ちは伝わったようで。
[メイン] 犬吠埼樹 : 結衣先輩との話に夢中で、一切お月見うどんに手をつけていなかった。
[メイン] 船見結衣 : 「……うん、こちらこそ……ありがとう」
[メイン]
琴葉 茜 :
「…ちょっちお花摘んでくる、すまんね」
立ち上がり
[メイン] 犬吠埼樹 : そんな状態に、今気が付き……。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ!結衣先輩、もう食べ終わっちゃいましたか……!?」
[メイン]
琴葉 茜 :
「すぐ戻るさかい」
食べ終えたうどんを戻しつつ
[メイン] 犬吠埼樹 : 慌てて、うどんを啜る。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ごほっ!げほっ!」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……また、帰ってしまうのですか?」
[メイン] 南条光 : 「ちょっとあたしから誘っておいて申し訳ないんだけど……」
[メイン] 南条光 : 「抱月さん事、頼めるかな?」
[メイン] 船見結衣 : 「いや……っ、樹……!?」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……はぁ」
[メイン] 船見結衣 : 慌てて、せき込む彼女の方を向いて。
[メイン] 犬吠埼樹 : 勢いよく啜ったこともあり、咳込んでしまう。
[メイン] 南条光 : 「心配だしさ、様子見に行って貰えると助かるんだ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あぅぁ……ご、ごべんなさいぃ……」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「…………」
[メイン] 琴葉 茜 : 「…帰りちゃいますよ、すぐ戻りますって」
[メイン] 船見結衣 : 「んん、気にしなくていいよ」
[メイン] 南条光 : 「あとまあ……ちょっと言いづらいんだけど」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……そんなに、私が」
[メイン] 船見結衣 : 優しく背中をさすり、心配そうな瞳で見つめる。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……うぅぅ、恥ずかしい……。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……あ。
[メイン] 船見結衣 : …少し、汗も見える。
[メイン] 南条光 : 「アヤさんちょっと周り見えてない感じするから、その反省も兼ねて」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「……そうですか」
[メイン]
犬吠埼樹 :
結衣先輩に、背中を触れられ……。
……心の奥に、火が灯されていくような感覚を覚え。
[メイン] 琴葉 茜 : 「んじゃ、ちょっち失礼」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「連絡を、まず取ります」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「電話が通じるなら、それで充分ですよね?」
[メイン] 琴葉 茜 : すすす、と食堂を出て行く、振り向かず
[メイン] 船見結衣 : 「……ゆっくりでいいから、お水も飲んでね」
[メイン] 南条光 : 「うん、ありがとうアヤさん」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「……ふ、ふぁい………んく……んく……」
結衣に頷き、ごくごくとコップに入った水を飲み。
[メイン] 南条光 : 「じゃあちょっとあたしもトイレ」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 携帯電話を取り出すと、そのままばんごを入力する
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「あら、どうでもいいんですか?」
[メイン]
アヤ・キリガクレ :
「貴女も彼女とは仲がよろしいでしょう?」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「心配、ですよね?」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「(……ここで、切り捨てられるのなら)」
[メイン]
南条光 :
「……ごめん」
ごめんね本当、アヤさん、抱月さんも………
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「………」
[メイン] 南条光 : 茜さんの事、本当に心配なんだ、あたしは………
[メイン]
アヤ・キリガクレ :
「ああ、ではお供しましょうか」
「友情というものですから」
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「携帯電話があるのに、ここで待つなんて馬鹿らしいですもの」
[メイン]
島村 抱月 :
着信音が食堂に響く。
アヤからの着信で鳴った……私の携帯のものだ。
[メイン] アヤ・キリガクレ : 「ねえ、南条様?」
[メイン]
船見結衣 :
「……よし、大丈夫かな」
少し涙ついた彼女、でももう平気そう…だと。
[メイン] 島村 抱月 : 入口、扉を支えに息も絶え絶えにして現れる。
[メイン]
南条光 :
「……頼んだよ!」
食堂を出る。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……はい、なんとか…… ……あ」
[メイン] メチャ子 : それに続いて現れる
[メイン] アヤ・キリガクレ : 後を追いかける
[メイン] 島村 抱月 : 「ひっどい目に……あった……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 呼吸を整えていると、入り口にまた、見知った顔が。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「あ、島村先輩……!」
[メイン]
島村 抱月 :
満身創痍である。横をなんか知った顔が通り過ぎた。
無視されるのってちょっと傷つくよね。
[メイン] 犬吠埼樹 : 先程話題に上がっていたということもあり、パッとそちらの方を向き。
[メイン]
船見結衣 :
「あ……抱月と……」
誰だろ、あれ。
[メイン] 犬吠埼樹 : ……え……?な、なんだかちょっと、ボロボロになっている……?
[メイン] 島村 抱月 : 「はぁ……はぁ……人だ……!」
[メイン] メチャ子 : 「人ね」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「え、え……!?ど、どうしたの、ですか……!?」
[メイン]
船見結衣 :
「……え、どうしたの……」
抱月の方を見ながら、半笑いで。
[メイン]
島村 抱月 :
「人だ……!」
ずるずると体を引きずって船見たちの元に。
溶けるようにして席に着く。
[メイン]
犬吠埼樹 :
何だか、只事じゃない、といったような雰囲気の島村先輩と……。
あと……。
[メイン] メチャ子 : 「どうしたって?」二人の方を見る
[メイン] 島村 抱月 : 「何がと話せば……長くなるかな……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 島村先輩と、メチャ子先輩の温度差に、違和感のようなものを感じつつ……。
[メイン] 船見結衣 : 「…憑き物に憑かれたような顔してるとこかな……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「な、なる、ほど……?」
[メイン] 船見結衣 : 「まあ、まあいいか……取りあえず、お水でも」
[メイン] 島村 抱月 : 「とりあえず……水を……」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「あ、そ、そうですね……!!」
あたふたとしながら。
[メイン] 船見結衣 : 手の付けていない水を、抱月へと渡す。
[メイン]
島村 抱月 :
「ありがと、う……」
水を飲む。おいしい。
[メイン]
犬吠埼樹 :
あぅ……。
さ、さすが結衣先輩です……。
[メイン] メチャ子 : 「憑き物ねえ…?」あまりよく分かっていない様子で
[メイン]
島村 抱月 :
人の優しさにここまで感銘を受けたのは初めてかもしれない。
気づけば涙が頬を伝っていた。
[メイン]
船見結衣 :
「まあ、ここは天下の食堂だし……ゆっくりしていきなよ」
…樹がこっち見てくれてれるな。
[メイン] 島村 抱月 : コップを卓に置く。
[メイン] 犬吠埼樹 : あ……ゆ、結衣先輩と、目が……あうぅ。
[メイン]
メチャ子 :
「じゃあそうさせてもらうわ」
コーヒーとメンチカツ注文
[メイン]
島村 抱月 :
「さて。改めてだけど、どうもね」
調子を取り戻した様子で言う。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「って、え、え……!?」
島村先輩の涙と、そこからの切り替えにまた驚きながらも。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ、は、はい」
[メイン]
島村 抱月 :
「一緒にお願いね」
メチャ子に便乗して軽食をオーダー。
[メイン]
犬吠埼樹 :
一先ず、島村先輩の話を聞く。
勇者部として、困っている人がいるなら、助けなくちゃ……だから。
[メイン]
船見結衣 :
「ああ、うん……?うん」
何かあったらしい、けど取りあえず…気になるし。
それにまあ、友だちと話すのは悪い気分ではないから。
[メイン] 島村 抱月 : 「……さて、どこから話したもんか……」
[メイン]
島村 抱月 :
[メイン] 島村 抱月 : 「……ってわけだね」
[メイン]
島村 抱月 :
ざっと語り終わるころには少し口の中が渇いていた。
それだけの冒険譚であった。
[メイン]
船見結衣 :
「そりゃなんとも、まあ……お疲れ様」
ははは、と苦笑いながら。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「な、なる、ほど……」
[メイン]
島村 抱月 :
旧校舎を訪れ、閉じ込められて脱出するまでの一部始終。
自分の口から話したにもかかわらず、嘘か真か分からない。
[メイン] 犬吠埼樹 : メチャ子先輩の方へ、少し視線を向けながら……。
[メイン] 船見結衣 : 「……抱月そういうのするタイプに見えなかったけど」
[メイン]
船見結衣 :
……もしかして、メチャ子が?
なんて、目線を送りながらも。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……え、えっと、その……話の腰、追っちゃいますけど……廃校舎は、立ち位置禁止、なのでは……?先生からも、危ないって……」
[メイン] 島村 抱月 : 「まあ……仕方なかったんだよ」
[メイン] メチャ子 : 「あらそうだったの?」
[メイン]
島村 抱月 :
「あの3人、ちょっと雰囲気悪いじゃん」
茜たちのことだ。
[メイン] 島村 抱月 : 「ちょっと人のいないところの空気を吸いたくて……ね」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「あ……あー……」
話を逸らされたような気もするけど……。
[メイン]
船見結衣 :
「んん…雰囲気……」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……でも、あの3人…。
[メイン] 犬吠埼樹 : 島村先輩の言う通り……どこか……。
[メイン]
船見結衣 :
そう言えば、さっき会った時も……
茜がそそくさと逃げ、二人が追う…
[メイン] 船見結衣 : なんて、悪い…かはわからないが、普段通りではなかったように思える。
[メイン] 島村 抱月 : 「まあ、逃げた先にも人がいたわけだけど……」
[メイン] 島村 抱月 : メチャ子の方を見る。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………あ、あはは……」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……ふーむ……今解決すべきことは……なん、だろう……。
[メイン]
船見結衣 :
「ははは……流されちゃってたわけだ」
二人の方を見て、なんとなしに。
[メイン] 島村 抱月 : 「流された結果がこれだから無惨なもんだね」
[メイン] 島村 抱月 : 「職員室の呼び出しを受けたのがそもそもの間違いだったかな……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………」←職員室の呼び出しを無視した人。
[メイン] 船見結衣 : 「あー呼びだし……」
[メイン]
島村 抱月 :
「私もサボりゃよかったよ」
二人みたいにね、と言外の意図を込める。
[メイン] メチャ子 : 「職員室に呼ばれるなんてアンタ何したのよ」
[メイン] 島村 抱月 : 「なんもしてないよ!?」
[メイン]
犬吠埼樹 :
「あ、あはは~……そ、その、サボっていたわけでは……」
結衣先輩の方へ、少し顔を。
[メイン]
船見結衣 :
……まあ、さっき先生が見えてたくらいだし、大した用事でもないんだろう。
……そう思って置こう。
[メイン] 船見結衣 : 「………んっと、まあ…」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………サボり、ですかね……?」
[メイン]
船見結衣 :
「…ご飯食べるっていう、用事があったわけで…」
目線を逸らす。
[メイン] 島村 抱月 : 「サボりでしょ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「ぐふぅっ」
[メイン] 島村 抱月 : 「まあ呼び出しに大した意味はなかったらしいけどね……」
[メイン]
犬吠埼樹 :
悪い事をしてしまったような感じがして。
割とショックを受ける樹。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あ、そ、そう、なんですね……?」
[メイン] メチャ子 : 「ふ~ん?」
[メイン]
船見結衣 :
「う、まあ……次、次は行くから……」
[メイン] 島村 抱月 : 「とはいえ、これで君たちも立派な不良だ。ようござんしたね」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「えぇええ~~~~~!?!?ふ、不良!?」
[メイン] 犬吠埼樹 : そ、それは、困っちゃうと言いますか……!
[メイン] 船見結衣 : 「不良…!?……それは……なんとも!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「お姉ちゃんに怒られちゃうので、不良嫌です……!」
[メイン] メチャ子 : 「不良扱いは困るわね」
[メイン] 島村 抱月 : 「でも、二人揃って先生のお誘いを断ったわけだ」
[メイン]
船見結衣 :
……不良とかつけられてたら、他の人になんて言われれるか……
わからないな。
[メイン] 島村 抱月 : メチャ子に関しては存在自体がよく分からないのでスルーした。
[メイン]
船見結衣 :
……それは、まあ……嫌だ。
私は……どうせ、変わらないんだろうし。
[メイン]
犬吠埼樹 :
「あうぅ……あ、あとから行こうと思ってたのでいいんです~!」
ずずず!とヤケのようにうどんを啜りながら。
[メイン] 船見結衣 : 「…ぐぬぬぬ……」
[メイン]
メチャ子 :
「でも呼び出しに大した意味は無かったんでしょ?」
「ならいいんじゃないの?」
[メイン]
船見結衣 :
言い返せない……
事実やってるんだから仕方ない。
[メイン] 島村 抱月 : 「小さなことでもルールはルールさ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「うぐぅ」
[メイン] 犬吠埼樹 : 反論、できない……!
[メイン] 島村 抱月 : 「まったく、サボり倒して二人でランデブーとはいい御身分のようで」
[メイン] 犬吠埼樹 : ……ごめんなさいお姉ちゃん……私、悪い子(?)になっちゃったみたいです……
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………へ?」
[メイン] 犬吠埼樹 : らんでぶぅ……?
[メイン]
船見結衣 :
「あー……不良ってのは、聞こえが悪いから嫌だな……」
つつ、と指で机をなぞりつつ。
[メイン] 犬吠埼樹 : ゆっくり、ゆっくりと、首を動かし、結衣先輩の方へ向く。
[メイン] 船見結衣 : 「……んん!?」
[メイン]
船見結衣 :
「聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするけど…?」
あ、めっちゃ樹が見てる……!!
[メイン]
犬吠埼樹 :
結衣先輩の、その横顔を見て。
島村先輩から投げられた『ランデブー』という言葉に、ドキッとしてしまう。
[メイン] メチャ子 : 「…ああ、私達邪魔だった?」
[メイン] 犬吠埼樹 : あわ、あわわわわわわ……。
[メイン]
島村 抱月 :
「えっ何さ」
軽い気持ちで吐いた言葉なのである。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「そ、そそ、そうですよ!!」
[メイン] 船見結衣 : 「…………」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「聞き捨て、ならない、です!!」
[メイン] 船見結衣 : あ。
[メイン] 犬吠埼樹 : あうぅ、何から、言えば……。
[メイン] 船見結衣 : ………やっちゃった!!!!!
[メイン]
島村 抱月 :
「……」
この空気どうしよね。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「えっと、その……先輩とは、そういう関係じゃないと言いますか………その……!……えっと、あくまで、尊敬している先輩、と言いますか……」
[メイン] 犬吠埼樹 : チク。と胸を刺すような痛み。
[メイン]
船見結衣 :
……ああ、もう……!
別に気にするつもりなかったのに、その……自分から引っかかって……!!
[メイン] 島村 抱月 : 「うん、まあ、ごめんね……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……そ、そもそも……!ランデブーは、男の人と、女の人とするもの、と言いますか……!」
[メイン]
船見結衣 :
それじゃまるで、気にしてるみたいで……
……いや……気にしては、いるけど、その……
[メイン] 犬吠埼樹 : また、チクりと。
[メイン] 船見結衣 : 「……あ~、あーー……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……あぅ……は、はい……」
[メイン] 島村 抱月 : 「まあ……そうだね、うん」
[メイン] 船見結衣 : 「その、だね」
[メイン]
船見結衣 :
「………」
何か言おうと思う、けど出ない。
今なら全て墓穴に入ってしまう気がしたからだ。
[メイン]
犬吠埼樹 :
慌てている自分に対して、毅然とした態度を取り続ける島村先輩とメチャ子先輩を見て。
頭が、落ち着きを取り戻してくる。
[メイン] 船見結衣 : 「ごちそうさまでした」
[メイン] 島村 抱月 : 「じゃあ……お二人は良いお友達と言うことで……」
[メイン] 犬吠埼樹 : 「………はぃ」
[メイン]
船見結衣 :
ぱぁん、と大きく手を叩いて。
がらっと席を立つ。
[メイン] 船見結衣 : 「…うん」
[メイン]
犬吠埼樹 :
少し、しょぼくれる。
先輩とは、『お友達』……。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……っ!」
[メイン] 島村 抱月 : ……やっぱり人付き合いというのは、面倒だ。
[メイン] 犬吠埼樹 : ぱぁん、という音に、少し体が跳ねる。
[メイン] 船見結衣 : その言葉の意味を飲み込む前に、反射で返事をした。
[メイン] メチャ子 : 「…」
[メイン] 犬吠埼樹 : 席を立ち上がる結衣先輩を、気弱な表情で見上げ。
[メイン] 船見結衣 : 「……樹……行く?」
[メイン] 船見結衣 : なんて、ぼそぼそとつぶやいて。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「……!!」
[メイン] 犬吠埼樹 : その言葉に、脊髄反射で。
[メイン] 犬吠埼樹 : 「はい!!」
[メイン] 犬吠埼樹 : 同じく、席を立ちあがる。
[メイン]
船見結衣 :
樹が食べ終わったか、なんて確認していない。
今すぐにここから立ち去りたい気分だった。
[メイン]
犬吠埼樹 :
私は、私は、この胸につっかえたものが何か分からなくて。
でも、このままでいるのも……嫌で……。
[メイン]
犬吠埼樹 :
……理由は分からないけれども。
………今この状態のまま、結衣先輩とは……離れたくない。
[メイン]
船見結衣 :
……なんでこんなに恥ずかしいんだろ。
…別に、些細な誤解なのに。
[メイン] 島村 抱月 : この人たち早くいかないかな~!気まずいな~!
[メイン] 島村 抱月 : サンドイッチの味がしないんだよね。
[メイン] 船見結衣 : ぱたぱたと、逃げるようにその場を二人で離れた。
[メイン] 島村 抱月 : 「……行ったか」
[メイン] 島村 抱月 : 「どこも問題爆発しすぎじゃない?同時多発テロかな?」
[メイン] 島村 抱月 : このメチャ子とかいう、よく分からない子が癒しに感じるくらいだ。
[メイン] メチャ子 : 「そうなの?今日は物騒なのね」
[メイン] 島村 抱月 : 「物騒だねえ~」
[メイン] 島村 抱月 : 「刃物が飛び交ってるよ、本当に」
[メイン] メチャ子 : 「ふ~ん治安悪くなったのねこの学校」
[メイン] 島村 抱月 : 「転校しようかな……」
[メイン] 島村 抱月 : 私……やつれちゃうよ……
[メイン] メチャ子 : メンチカツを一つ食べる
[メイン] 島村 抱月 : 「……それ、貰っていい?」
[メイン] 島村 抱月 : 揚げ物でも食べたい気分だ……
[メイン] メチャ子 : 「じゃあそのサンドイッチ頂戴」
[メイン]
島村 抱月 :
「どうぞ」
一切れ分渡してメンチカツを持ってく。
[メイン]
メチャ子 :
「ん、」
それぞれ交換する
[メイン]
島村 抱月 :
「うまし」
もっしゃもっしゃ
[メイン] メチャ子 : むしゃむしゃ
[メイン] 島村 抱月 : 「平和だー……」
[メイン] 島村 抱月 : 「そ~いや、なんで廃校舎なんていたわけ?」
[メイン] 島村 抱月 : 気が緩んだので世間話をするメンタル。
[メイン] メチャ子 : 「そういえば言ってなかったっけ?」
[メイン] メチャ子 : 「怖いもの見たさよ」
[メイン] 島村 抱月 : 「こわ」
[メイン] 島村 抱月 : 軽く笑う。
[メイン] 島村 抱月 : 「怖いものねー……」
[メイン] メチャ子 : 「何か知らない?」
[メイン] 島村 抱月 : 「あー……知ってるよ、あはは」
[メイン] 島村 抱月 : 一つね、と付け加えて。
[メイン] 島村 抱月 : 「そうだね、名付けて……”狂気!思春期の縺れ合う人間関係!”ってところですかな?」
[メイン] 島村 抱月 : 一番怖いのは人間……!
[メイン] メチャ子 : 「拗れ合う人間関係…」
[メイン] メチャ子 : 「それそんなに怖いの?」
[メイン] 島村 抱月 : 「怖いっしょ」
[メイン] 島村 抱月 : 「さっきの空気見たでしょ?」
[メイン] メチャ子 : 「さっきの…?」
[メイン]
島村 抱月 :
「うどん啜ってた子たちだよ」
犬吠埼と船見……と言っても通じないだろう。
[メイン] 島村 抱月 : ちょっと囃し立てただけなんだけどあんな空気になるとは。
[メイン] メチャ子 : いまいちよく分からない、何を怯えているのか
[メイン] メチャ子 : そしてそれは多分彼女が図太い神経してる所もあるかもしれない
[メイン]
島村 抱月 :
「……ま、あんまり長居するのも悪いや。私はこの辺で」
食堂の席を立つ。
[メイン]
メチャ子 :
「そうね」
食器を片付ける
[メイン]
島村 抱月 :
「偉い!」
自分も倣って食器を片付ける。
[メイン]
島村 抱月 :
それで私は食堂を後にする。
まあついてこさせるつもりはないが、ついてこられても困らない……メチャ子は顔以外は無害だ。
[メイン] メチャ子 : 特にこの場にとどまる理由も無いのでついていくように部屋を出る
[メイン] メチャ子 :